一般社団法人 日本乳癌学会

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学会概要

理事長挨拶

最終更新日:2022年8月22日

一般社団法人日本乳癌学会 理事長 戸井 雅和

この度、一般社団法人日本乳癌学会理事長を拝命しました京都大学乳腺外科の戸井雅和と申します。これまで代々の素晴らしい理事長のリーダーシップのもとで多くのことが達成されてきました。それらの成果を引き継ぎ、さらなる発展を推し進めたいと考えております。

小生、1982年に医師になり、92年まで広島大学に所属しました。その間、広島大学、佐賀県立病院、九州がんセンターでトレーニングを受け、学位取得後、90年から92年には英国オックスフォード大学分子医学研究所および臨床腫瘍学部門に留学しました。基礎研究に携わりましたが、その傍らで、基礎研究から臨床第2相試験までを一気通貫で行う独自のスタイルも目の当りにしました。92年から2007年迄がん・感染症センター都立駒込病院で働きました。90年代は臨床とトランスレーショナルリサーチを、2000年代に入ってからは臨床試験にも注力しました。2007年からは京都大学で、関連施設の方々と共に乳腺疾患の臨床、教育、研究に従事しています。

乳癌は多かれ少なかれ女性ホルモンに依存し、その特性を一言でいえば多様性に尽きます。多様性に対応すべく、集学的治療があり、Evidence Based Medicineが重要で、チーム医療を必須とし、更なる進化のためにはPrecision Medicineが必要です。腫瘍サブタイプの概念が導入されて、標的薬の開発が進み、遺伝性乳癌の診断、予防、治療が行われるようになり、さらに腫瘍ゲノム解析、免疫療法の導入に至っています。外科治療、放射線治療、薬物療法全領域で、治療のEscalationとDe-escalationが進展し、治療成績の向上とQOLの改善が同時に実現するようになりました。画像診断、病理診断、形成外科の進歩は著しく、他方、若年性乳癌、高齢者の方の乳癌に対する治療、ケアも飛躍的に良くなっています。
しかし、一方で、乳癌の新規発生は増加の一途を辿っており、現在、日本に住む女性は、10人に一人あるいはより高い頻度でその生涯において乳癌に罹患すると推定されています。死亡者数も、発生数の著しい増加の中では、未だ明らかな減少に転ずるには至っていません。一人一人の患者における治療の最適化、新しい診療法の開発等とともに、早期発見、予防、罹患リスクの評価、スクリーニング、早期治療が大切と考えられます。乳癌はまさに女性のCommon Diseaseであり、治療やフォローアップが20年以上に及ぶ特徴をもった病気です。正確かつ精密に診断し、的確に急性期の治療を行い、その後長期の治療、フォローアップを継続する、それぞれの場面場面では施療とともに手厚いケアが不可欠です。がんからsurviveするため、そしてSurvivorshipを支援すべく、基盤を整備したいと考えています。

さて、日本乳癌学会におきましては、何より、人の育成、養成が求められています。十分な専門性を持った医療者を、それぞれの職種、領域において育てる必要があります。まだまだ会員数は十分ではありません。そして、会員一人一人が会員であることのメリットを実感し、メンバーシップを誇りに思えることが何より大切です。本学会は今年30周年を迎えました。真にこれから発展する学会と言えます。会員が充実した時間を過ごすことができる、人の輪、交流のネットワークが沢山あり、かつ効率的に働くことができる、教育、修練の場、機会がどこにでもいつでもあって、発信が容易で、国内、国外に向けて発信し、それが支援される環境が整っている、基礎研究、臨床研究、学際研究を実施できるプラットフォームに容易にアクセスできる、これらのことは今後の発展のために必須です。会員一丸、All Japanで力をあわせ前進したいと思います。

乳癌研究は、入り口はさほど大きくはないが、いったん中に入ると果てしない広さと深さがあると言われます。診療の醍醐味のようなもの、研究の奥深さ、先進性をより多くの人に、そして若い人に伝えたいと思います。従って、広報活動は肝心要です。専門性を高めたいと思う医療者は、色々な修練の機会と魅力的な教育内容を欲します。資格を取る際には無論のこと、取得後も同様にあるいはそれ以上に教育、研修は重要です。医療を行う場は様々です。高度先進的な施設で行うこともあれば、限られた環境で実施することもあります。それぞれの環境、施設、地域において連携し、ガイドラインに基づくハイレベルの診療を行い、患者満足度の高い医療を実践する、その様な場環境を整えることの重要性が指摘されています。成果は学術総会、地方会などで発表され、学術誌等を通じて発信されます。学術集会、Breast Cancerは充実度を増し、国際性豊かで、認知度も上がりました。ぜひさらに向上発展して、プレゼンスを高めて行きたいと思います。

このような事柄を進めるには、関係する学会や団体との連携、協調が欠かせません。また、学会組織としての活動とともに、草の根で会員一人ひとりが活動を展開することも総じて大きな力になることはよく知られています。着実に進めたいと思っています。

法人としての学会の基盤整備、充実も進めて行く必要があります。社会的貢献、啓蒙の推進、また同時に会員の活動が適格に評価されることも重要と感じています。学術団体としては画期的な研究を支援し、高度先進医療の導入を推進、先導的な人材を育成することがタスクであると考えています。

働きやすく、活動しやすく、力を発揮しやすい、温かくて、発信力豊で、課題を含め何でも希望や夢を自由に語り合える様な環境の構築、整備を進めたいと考えております。ご指導、ご鞭撻、ご支援の程どうかよろしくお願い申し上げます。

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