2026年 班研究班員 公募のお知らせ
1. 研究課題
乳癌薬物療法における薬剤性間質性肺疾患のAI支援リスク評価に関する研究
2. 研究の目的
乳癌薬物療法の進歩により、T-DXd を含む抗体薬物複合体(ADC)、CDK4/6 阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、mTOR 阻害薬など、多様な治療が実臨床で用いられるようになってきた。一方で、乳癌薬物療法に伴う薬剤性間質性肺疾患(ILD)は、使用薬剤により頻度に差はあるものの、主な臨床試験およびリアルワールドデータから一定の頻度で発生することが示されている。抗体薬物複合体では、T-DXdを中心に概ね10〜15%前後と報告されており、他のADCでは1〜3%前後とされる。CDK4/6阻害薬では約1.5〜2%、免疫チェックポイント阻害薬では単剤で2.5〜5%、併用療法で7〜10%程度とされ、mTOR阻害薬であるエベロリムスでは10〜20%程度の報告がある。これらの数値は集団背景により変動するものの、乳癌薬物療法において薬剤性ILDは無視できない安全性上の課題であり、診断の難しさや施設間での対応の違いが指摘されている。早期診断や重症化の回避、院内外での連携の在り方を含め、乳癌診療における安全性確保の観点から整理が求められる領域である。
薬剤性 ILD に関する知見は主に呼吸器領域を中心に蓄積されているものの、乳癌薬物療法で実際に使用される薬剤の特徴や治療経過を踏まえ、乳癌診療の流れに沿って多職種が共通理解を持てるように整理された指針は国内に十分整備されてこなかった。こうした背景から、本研究では 薬剤性 ILD の発症に関わる臨床因子および画像所見を整理し、AI を含む多角的解析を用いてリスク因子を層別化することを中心的な目的とする。 日本乳癌学会は、薬物療法、手術、放射線治療、放射線診断、支持療法を横断する大きなネットワークを有しており、乳癌診療に携わる多様な医療者が共有できる形で本領域の知見をまとめることに適した立場にある。
本研究では、乳癌薬物療法に伴う薬剤性 ILD の実態を多施設から集め、乳癌診療の中でどのような場面で注意が必要となるのか、どのような情報共有が望ましいのかを全国規模で整理していくとともに、 治療薬剤ごとの特徴や背景因子、既存画像所見を踏まえたリスクプロファイルを明らかにし、AI 支援定量 CT 解析の結果も組み合わせて、発症リスクの層別化を行う。 日常診療における注意点や連携の取り方、院内での情報共有の工夫など、実務に直結するテーマについても、各施設の経験を持ち寄りながら検討を進める。
研究期間内には、(1)薬剤別 ILD の発症状況と関連因子の整理、(2)既存画像所見を基盤としたリスク層別化の暫定モデル、(3)AI 支援定量解析を組み込んだ追加的解析の結果、(4)これらを踏まえた実臨床向けの注意点整理資料(ハンドブック案など)の作成、の到達を目標とする。 最終的には、薬剤性 ILD の特徴や注意点、診療の流れの中でのポイントをわかりやすく整理した資料や、教育的に活用できるスライドなどを作成し、学会員が日常診療で利用できる形で共有することを目指す。これにより、乳癌診療の安全性と質の向上に寄与し、将来的にはより標準化された診療体制づくりにもつながることが期待される。
3. 研究期間
2026年度より2年間
4. 班構成
10名以内
5. 選考方法
学術委員会が選考し、理事会にて決定する
6. 研究費
班に対し1年間200万円(計400万円)
7. 研究発表
1.中間報告 第35回日本乳癌学会学術総会(2027年)
2.最終報告 第36回日本乳癌学会学術総会(2028年)
3.「Breast Cancer」誌に班研究終了後1年以内に投稿すること(必須)
8. 応募方法
【班研究課題 分担課題研究計画書】1枚にて個人1名の応募とする
E-mail:oubo@jbcs.gr.jp
9. 応募締切
2026年2月5日(木)23:59必着
一般社団法人 日本乳癌学会
学術委員会
委員長 平 成人
