臨床の疑問を研究へ、研究の成果を臨床へ還し、乳がん医療の新たな未来を創る

名古屋大学 青山陽亮 先生
【出身大学】名古屋大学 【卒業年】2016年
今までどのような病院で働いてきましたか?
腫瘍内科医として主に二つの病院で働いてきました。一つ目は虎の門病院です。内科専門研修と並行し腫瘍内科医として幅広い癌種の薬物療法や支持療法を経験しました。乳がんだけでなく、消化器がん、泌尿器がん、婦人科がんなど多くの症例を経験したことで、どの分野にも共通する支持療法や有害事象のマネジメントを習得できました。市中病院ならでは、という観点では併存疾患を抱えた症例へのがん診療です。透析をしながらの薬物療法、循環器疾患を併存する中での薬物療法、こういった難しい症例への対応能力が身につきました。二つ目はがん研有明病院です。現在は、乳腺内科の医員として外来枠を持ち、日々多くの乳がん患者さんと向き合っています。ひとつの疾患を薬物療法という側面から追求することで、より高度な専門性を身につけることに繋がりました。ハイボリュームセンターで多くの症例を経験するということは、例えば頻度が0.3%というような稀少な症例や有害事象に遭遇する機会があるということです。これまで気が付かなかった新しい発見や臨床的疑問を感じながら、日々診療をしています。
乳腺科を志望した理由、決め手はなんでしたか?
まず、乳がんは社会的な影響力が大きい疾患であるという点です。今や日本人女性の9人に1人が乳がんに罹患する時代です。自分の身近なところでも頻繁に見聞きする疾患であり、web上でも「乳がん体験記」というような記事が溢れています。数ある病気の中で、社会的関心の高い疾患を仕事にできることがモチベーションに繋がるのではと感じました。そして、薬物療法の進歩が著しく興味が絶えないという点もございます。毎年のように新しい薬剤が実臨床に登場します。新薬を使用すれば、自ずと新しい有害事象にも遭遇します。臨床医、あるいは研究者として長年にわたり興味を持ち続けられる分野だと思います。そして最後は患者さんとのコミュニケーションという観点です。私は、乳がん患者さんの社会的背景、価値観、趣味など含め、患者さんと対話をすることが好きでした。患者さんが難しい悩みを抱えていても、少しずつ分かり合えていけるような関係性構築のプロセスも醍醐味の一つだと感じています。
現在取り組んでいることや研修や研究について
臨床研究に積極的に携わるようにしています。院内の研究では、豊富な症例数を活かした単施設のリアルワールド研究、脱毛対策など支持療法の研究、有害事象のモニタリングを行うePROに関連した研究などを実施しています。多施設の研究という観点では、臨床試験グループであるJCOGやWJOGの乳腺グループに参加し、臨床試験への症例登録や新規試験の立案に携わっています。WJOG乳腺グループではBRIGHTという名称の若手会があるのですが、現在はBRIGHTの副代表を務めています。BRIGHTでは臨床研究だけでなく、国際学会の速報会や、臨床判断に迷うケースにおけるコンセンサス会議など、勉強会もたくさん実施しています。将来、皆さんと一緒に臨床研究を実施できることを楽しみにしています。
やりがいについて教えてください
臨床の中でのやりがいという観点では、やはり患者さんに感謝されたときが最も嬉しく感じます。乳がんの診療というのはチーム医療ですので、もちろん私だけの力で患者さんを幸せにすることはできません。多くのスタッフがともに目標を共有して診療にあたり、患者さんの表情がだんだん明るくなっていく、そんなときにこの仕事をしていて良かったなと実感します。研究を実施する中でもやりがいを感じることが多くあります。研究というのは成果を発表するまでに多くの壁を乗り越えなければなりません。研究者で力をあわせて難題を解決したとき、そして学会発表や論文で成果の公表ができたとき、言葉では表現できない達成感を感じます。
所属学会での活動について教えてください
乳癌学会では、第31回学術集会の際に会長特別企画「次世代の乳がん医療を拓く」に参加したのがとても印象に残っています。全国の若手医師が各チームに分かれ、今後の課題の解決策を模索していくという企画です。私たちは「薬物療法の耐性を克服するターゲットを明らかにする」というテーマで、半年にわたり検討を重ねて発表をしました。臨床腫瘍学会では、「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」という恒例の企画で腫瘍内科の研修制度についてお話をしたり、ファシリテーターを務めたりと、将来の腫瘍内科医の育成という観点で携わる機会が多くございました。
ホームページを見ている後輩たちへのメッセージ
乳がん領域は、臨床医としても研究者としても、とても魅力のある分野です。一緒に頑張りましょう!


