一般社団法人 日本乳癌学会

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ごあいさつ

最終更新日:2024年8月28日

 このたび、一般社団法人日本乳癌学会理事長を拝命いたしました東北大学大学院 乳腺・内分泌外科学分野の石田孝宣と申します。大変光栄に存じますとともに、身の引き締まる思いでいっぱいです。これまで、歴代の理事長や役員の方々をはじめ、会員の皆様が築き上げてこられました本学会が、さらなる発展に向かいますよう全力を尽くす所存です。

 私は、1987年に東北大学医学部を卒業し、以降、37年にわたり東北地方で活動して参りました。学生時代から外科医を目指しておりましたが、初期研修を終えて東北大学に戻りました後、乳腺医療に魅了され、乳腺外科医となることを決意いたしました。ちょうど日本で乳房温存療法が開始された時期であり、幅広い領域の臨床や研究に奥深さを感じておりました。検診から診断、治療まで一貫して患者様やご家族と接する機会が多い乳腺診療は、さらに魅力が増していると感じております。

 乳がんは生涯において日本人女性の9人に1人の割合で発症し、現在も罹患数は増加の一途を辿っております。欧米では、乳がん死亡率の減少が報告されておりますが、残念ながら日本では減少には至っておらず、現在の重要課題です。新規治療法の開発を推進することはもちろんですが、合わせまして検診をはじめとする予防医療にもさらに力を入れて行く必要があると考えます。

 乳がんに対する治療法は日々進歩を続けており、早期に発見し、がんの性格に応じた適切な治療を行うことにより良好な成績が期待されます。乳がんの治療には、体の部分的に効果が期待できる局所療法と体全体に行き渡る全身療法があります。局所療法の代表は手術や放射線療法で、全身療法は各種の薬物療法になります。手術では、乳房を部分的に切除する乳房温存療法や乳房を全切除する乳房切除術があり、乳房の再建も保険適用となり様々な術式が選択可能です。また、放射線療法も期間を短縮する方法が開発され、より受けやすくなっています。

 薬物療法では、乳がんの性格に応じた薬物の選択が可能となり、抗がん剤やホルモン剤に加えて、免疫や抗体に関わる新規の薬剤なども次々と開発されています。さらに、遺伝医療の発展は目覚ましく、幅広く保険が使えるようになり、個々の患者さんに応じた治療選択が加速しています。

 こうした進歩を地域格差なく皆様にお届けするためには、あらゆる職種の総合力を結集する必要があり、また、関連各学会や団体との協力が不可欠です。これは、検診をはじめとする予防医療も同様で、行政や医師会など多方面の連携が重要となります。残念ながら、日本の乳がん検診受診率は、先進国では下位にあります。早期に発見することにより、生命予後が改善することはもちろんですが、治療の負担も軽減されます。乳がん検診の重要性を皆様に知っていただき、少しでも受診率が向上しますよう努めて参ります。

 日本乳癌学会では、患者様やご家族の様々なご負担や不安を軽減し、より質の高い生活が送れる環境を整備して参ります。また、働き方改革が始まり、学会会員のみなさまの労働環境の整備がますます重要となっております。すべての医療スタッフが心身ともに健康で余裕のある労働環境となりますことが、質の高い医療を提供することにつながると考えておりますので、学会として様々な支援ができますよう整備させて頂きます。また、乳がんに関する新しい情報が次々と更新されておりますので、こうした情報を皆様にできるだけ早くお届けできますようWeb等での広報活動に力を入れたいと考えております。

 日本乳癌学会の活動の1つとしまして、「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」の刊行があります。これは、医療者向けの「乳がん診療ガイドライン」を一般向けに平易な表現でわかりやすく解説した内容となります。患者様も作成に関わっておられますので、ぜひ参考にしていただければと思います。加えまして、学会として基礎研究や臨床研究にも力を入れ、診療を変える科学的根拠の創設を推進して参ります。さらに、次世代の乳腺医療を支える人材の育成も重要な役割ですので、学会を挙げて支援して参りたいと考えております。

 日本乳癌学会と乳腺医療が更なる発展を遂げ、皆様に取りまして有益となりますよう、ご支援をなにとぞよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人日本乳癌学会 理事長 石田 孝宣

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