一般社団法人 日本乳癌学会

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学会概要

将来検討委員会 2022年8月から2024年7月までの取り組み

最終更新日:2024年10月21日

前理事長
京都大学名誉教授
がん・感染症センター 都立駒込病院院長
戸井雅和

JBCS将来検討委員会(2022-24)では、8つの課題を主要テーマにとり上げ、集中的に討議、検討し、活動を展開した。当初(22年秋)に6working group(WG)で開始、その後、乳房再建に関するWG、大学教育に関するWGが追加された。国外の状況と比較しギャップや乖離があると考えられる課題、早急に対応すべき喫緊の臨床課題、世界的に関心が高く近未来に重要になると想定される課題をとり上げた。課題選出にあたっては、理事からの要望が強かったJBCS会員数の増加、発信力の強化の2点も考慮した。

乳癌発症リスクの評価、特に数理モデルなどによる個別定量評価系、の実地導入は、米英主導で行われてきた背景があり、疫学的背景が類似する欧米では浸透度が高い。これに対してわが国を含むアジア諸国では、基盤となる登録データが乏しい、最近の30年から40年の間に母集団自体の乳癌発症リスクが著しく変化、高くなる中で検討を進める必要がある、などの事情から導入が遅れていた。本邦女性を対象とする乳癌リスク評価ツールの検討、市民への乳癌リスクawarenessを推進、リスク層別化検診の検討などが主要課題として提案され、学会内外で討議、情報発信などが行われた。

乳房再建に関しては、アクセスに関する地域差が指摘され、再建手術へのアクセスの均霑化を一つの目標とし、患者・医療者を対象とする出版物の作成協力、普及推進が検討され、アンケート調査の実施、さらに一般社会への啓発なども実施された。

対応すべき喫緊の臨床課題として、乳癌ラジオ波焼灼療法、リキッドバイオプシー、ロボット手術がとり上げられた。限局性小原発乳癌に対するラジオ波焼灼療法の開発はわが国が主導的役割を果たしてきた診療分野の一つで、保険償還も世界に先んじて承認された。他方、適応が詳細に規定され、経皮的非切除アブレーション法の習得、施設の整備なども必要であり、国・学会協働で準備、体制の整備、調整等を行った。

リキッドバイオプシーは再発乳癌の特性分析、治療後のminimal residual disease(MRD)の評価、また最近ではmulticancer early diagnosis(MCED)システム開発の点からも臨床的関心度が極めて高い課題である。他方、現実的な施行上の制約や技術的限界も多く、まだまだ発展途上の医療技術とも考えられている。最近動向をレビューし、情報のアップデート、会員間の情報共有、普及活動が行われ、利用ガイドの作成などが行われた。

原発乳癌手術におけるロボット技術の導入は韓国、台湾、英国、イタリアなどで先行していた。現在は世界的な潮流となりつつある。特に、乳頭乳輪温存乳房切除などにおいて有用性が高いと考えられている。本邦への導入が実施される場合、JBCSとして適切かつ迅速な対応を行うべく多面的な検討が行われ、同時に海外専門家を招いてのシンポジウム開催など、最先端情報の共有、意見交換などの機会が設けられた。

このような活動を展開し、後述するような学際的事案を実地に織り込んでゆくには、大学教育の充実は欠かすことができない。素より会員数、専門医数の増加を図る観点からも大学教育における乳癌関連分野の拡充は求められている。まず、大学学部教育における実態の調査が行われ、会員との情報共有が行われた。今後、様々な具体的な活動が検討されている。

乳癌領域では、画像診断、病理診断分野を中心に人工知能(AI)の開発、導入が急速に進んでいる。そのような世界的状況において、最先端情報の共有、課題や問題点の把握、会員や一般への情報発信が行われた。技術的には海外で開発されたもの、国内独自開発が含まれる。新たな技術の導入や展開にはどのような整備、準備を行うべきか、他学会との協調も含め、様々な検討が行われ、情報が発信された。

女性で最も頻度の高い腫瘍性疾患である乳癌に関連する情報はビッグデータであり、それを解析・研究するデータサイエンスは、現在のあるいは過去の乳癌診療や予防に関する成果を俯瞰的に分析、評価し、今後の発展を考慮して修正し、新たな計画等を立てる上で欠かせない。学際的専門分野であるが、データを産生する会員全員が知るべきであり、共に考える課題であるともいえる。そのような観点から、様々な討議と情報の発信が行われた。

以下、8つのワーキンググループの2年間の総括を示す。

 


AI-ワーキンググループ
ビッグデータサイエンス ワーキンググループ
リスク評価ワーキンググループ
リキッドバイオプシーワーキンググループ
乳腺ロボット手術ワーキンググループ
乳癌ラジオ波焼灼療法検討ワーキング
乳房再建に関するワーキンググループ(2022年-2024年)
大学教育に関するワーキンググループ

 

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