一般社団法人 日本乳癌学会

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学会概要

リキッドバイオプシーワーキンググループ

最終更新日:2024年10月21日

1.活動の目的

乳癌診療におけるリキッドバイオプシーの臨床的意義の明確化と臨床応用の促進

2.活動の主旨

A. リキッドバイオプシーの臨床応用を下記の観点から促進する

  1. 乳癌の早期発見・早期診断
  2. 早期乳がんのタイピングと治療戦略への応用
  3. 微小残存病変のモニタリング・臨床応用(治療戦略)
  4. 転移再発乳癌の治療戦略への応用

B. 乳腺診療に関わる医療従事者に対する教育を通して、リキッドバイオプシーの臨床的意義の理解と臨床研究を促進する

3.メンバー

座長   多田寛・上野貴之
メンバー 内藤陽一・鶴谷純司・下井辰徳・久保真・下村昭彦・尾崎由記範・永山愛子・川島雅央

4.活動報告

  1. 2023年2月21日 ガーダントヘルスとブレインストーミングミーティング(Web開催)
    リキッドバイオプシー・アッセイ(Reveal、Guardant360、INFINITY)について説明とディスカッション
  2. 2023年5月23日 Natera社とブレインストームミーティング開催
    リキッドバイオプシー・アッセイ(Signatera)について最新情報とディスカッション
  3. 2023年5月24日にガーダントヘルスと、ミーティングを開催
    リキッドバイオプシーの現状と課題についてsmall groupでディスカッション
  4. 医療従事者に対する教育
    2024年7月12日(金曜日)16:00~17:10
    乳癌学会学術総会 将来検討委員会(リキッドバイオプシーワーキンググループ)企画
    「乳がんのリキッドバイオプシーの最新情報の共有と社会的問題点を議論する」
    1. 検診のリキッドバイオプシーの最新情報
      下村 昭彦(国立国際医療研究センター病院 がん総合内科/乳腺・腫瘍内科)
    2. リキッドバイオプシーによる微小残存病変による術後モニタリングの最新情報
      内藤 陽一(国立がん研究センター東病院 総合内科)
    3. 転移再発のリキッドバイオプシーの最新情報
      多田 寛(東北大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科学分野)  
    4. ディスカッション
    *本委員会企画についての内容はmedical Tribune誌に掲載予定

5.活動計画

  1. リキッドバイオプシーの手引き作成中
  2. 第34回日本乳癌検診学会学術総会(2024年11月29-30日)

日本乳癌学会 リキッドバイオプシーWG・日本乳癌検診学会 次世代乳癌検診検討員会合同企画
「リキッドバイオプシーによる乳がん検診の可能性を考える」を企画。

6.リキッドバイオプシーの現状と将来展望

 現在がんパネル検査としてリキッドバイオプシーは転移再発乳癌において治療選択目的に臨床的に使用(保険収載)されている。がん関連遺伝子の変異やコピー数異常、構造異常などを検出することにより、がん患者の診断や治療方針決定の補助として使用されている。また、特定の医薬品の適応の補助判断(コンパニオン診断)としての機能もあり、乳がんにおいてはNTRK1/2/3やMSI-Highが、それぞれエヌトレクチニブやペムブロリズマブのコンパニオン診断として利用可能である(腫瘍横断的に利用可能)。米国ではESR1変異に対するelacestrantのコンパニオン診断や、PIK3CA変異に対するalpelisibのコンパニオン診断としても承認されている。今後、治療経過のモニタリングを行いながら、リキッドバイオプシーによる薬剤耐性メカニズムの検出とそれに対応した薬剤選択がますます活発化されるものと考えられる。また、転移再発乳癌の治療中に複数回リキッドバイオプシーを行うSerial Liquid biopsyにおいては、臨床的に重要な新しい標的となる変化が見られる可能性があり、ルミナールタイプではPADA1試験などが報告されているが、CGPを繰り返し行うことに対する現状ではエビデンスが不足しており、最適なタイミングを決定し、このアプローチから最も恩恵を受ける患者サブグループを特定し、連続 cfDNA 分析が遺伝子型を一致させた治療法の選択と患者の転帰に与える影響を評価するための更なる研究が必要であると考えられる。
 さらに、原発がんの手術後の微小残存病変(MRD: minimal residual disease)のモニタリングにリキッドバイオプシーが応用され実用化されている。血中の循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)を用いたモニタリングでは検出感度を上げるため、腫瘍組織を用いて患者ごとに対象とする遺伝子を決める方法(tissue-informed)や、遺伝子の変異のみでなくエピゲノム(メチル化等)を用いて感度を上げる方法などが開発されている。さらに全ゲノム解析を用いて感度を上げる工夫が行われており、また、微小残存病変の検出により画像診断による再発の検出前に治療介入を行う臨床試験が行われるなど治療戦略への応用が進んでいる。微小残存病変による治療介入により予後の改善が認められれば、現在の治療戦略にパラダイムシフトが起こることが期待される。
 リキッドバイオプシーを用いたがんのスクリーニング・早期診断についても、様々な研究が行われている。主には多種類のがんをいちどにリキッドバイオプシーで診断するmulticancer early detection(MCED)と、がんのリスクに応じて特定のがんの早期発見を目的としたシステムなどが研究開発されている。主な試験とその結果をに示した。2022年に報告されたESMOのctDNA recommendations  (Ann Oncol. 2022 Aug;33(8):750-768.)では、「ctDNAベースの検診に対する応用は現在行われている試験の結果が待たれるが、現時点では検診はctDNAアッセイの有効な用途とは見なされていない」とされている。今後は全ゲノム解析やエピゲノム解析、さらにマルチオミクス解析やAIを駆使したさらに精度の高いシステムが開発されていくと思われるが、本邦でもこれらを開発・検証していく必要があると考える。

  DETECT-A PATHFINDER SYMPLIFY
検出法 DNA+タンパク Galleri Galleri
対象 65-75歳
女性
がんの既往なし
50歳以上
男女
症状なし
18歳以上
症状あり
対象者数 9911 6621 5461
陽性的中率 19.4% 38% 75.5%
陰性的中率 99.3% 98.6% 97.6%
感度 27.1% 66.3%
特異度 98.9% 99.1% 98.4%
米国 米国 英国

 


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