設立の背景
国の健康フロンティア戦略の推進により、乳癌検診受診率は向上し、それにともない早期乳癌発見数も急激に上昇している。現在では、女性のがんの第1位となっている。現行の乳癌治療は、腫瘍の大きさ、個数、腫瘍の乳管内進展の有無等により乳房を全摘する「乳房切除術」と、腫瘍のみを摘出する「乳房部分切除術」が行われている。しかしながら、女性の象徴である乳房に傷をつけることは患者への身体的および精神的負担となり、たとえ治療が完了しても多くの後遺症を残す。
ラジオ波熱焼灼療法(以下RFA)は国内では肝臓がんの治療として実績がある。RFA療法の原理は交流電流により電極周囲の組織にイオンの変動が起き、その結果として生じる摩擦熱によりがん細胞を凝固、壊死させるものである。この手技を乳がんに応用したもので、乳腺組織では、シングルニードルで熱コントロールも容易なCool-tip RF System(Medtronics, Energy-Based Devices, Interventional Oncology, Boulder, CO, USA)が主に用いられている。
RFAの早期乳癌局所治療としての実用化は、増え続ける早期乳癌患者の外科治療を更に低侵襲化させ、患者の苦痛を軽減し、治療期間、入院期間の短縮、さらには早期社会復帰を可能とするものである。この低侵襲治療のメリットを社会に広く啓蒙することにより、我が国の女性に対して、乳癌の「早期発見、早期治療」の重要性を認識させ、さらなる乳がんの検診率上昇にも貢献できるであろう。ワーキングでは、早期乳癌RFAの薬事承認と保険収載後に向けての準備をすることから始めた。
主旨
厚生労働省からの薬事承認および保険収載の条件に従い、早期乳癌ラジオ波焼灼療法が安全かつ有効に活用できる環境を日本乳癌学会が整備することとなった。
メンバー構成
先進医療RAFAELO試験のメンバーを中心に決定した。メンバーの選定に当たっては以下に配慮した。
- 地域で偏りがない
- 外科。病理診断科、放射線診断科、放射線治療科など関連する幅広い診療科より人選する
- 乳癌ラジオ波焼灼療法の実績がある
座長を中心としたWEB会議、全体会議を行った。
活動の経過と実績
早期乳癌ラジオ波焼灼療法の保険収載に向けて以下の準備を行った
- 適正使用指針の策定
- NCD乳癌登録と連動する症例登録システムの構築
- 教育プログラム(術者用と病理用eラーニング)の作成
- 実技研修システムおよび術者認定システムの構築
薬事承認、保険収載までの経過とその後
1. ラジオ波焼灼療法の経緯
1) 保険収載まで
- 2021年1月 日本乳癌学会から厚生労働省医療ニーズの高い医療機器の早期導入に関する検討会(医療ニーズ検)に要望書が提出
- 2021年11月 医療ニーズ検「早期導入品目」選定
- 2022年11月 薬事申請
- 2023年7月7日 薬事承認
- 日本乳癌学会にて ・適正使用指針策定 ・症例登録システム構築 ・教育プログラム作成 ・実技研修システム準備
- 2023年12月1日 保険収載
2)保険収載後
- 実技研修開始
- 認定術者 72名(実施施設 62)2024年8月8日現在
2.活動の成果
特に有害事象の報告なく、保険収載2023年12月1日から2024年7月31日までで、全国でのRFA実施は107例となった。グレード3以上の有害事象は報告されていない。
現状の課題
NCDからのレジストリ-データの確認が半年毎となり、リアルタイムでの実態の把握が困難である。
将来展望
RAFAELO試験の結果に続いて、新たなガイドラインの基となる臨床データを創出して、早期乳癌ラジオ波焼灼療法を国内ばかりでなく海外においても情報発信し標準化していく。また連動して他のnon-surgical ablation(NSA)の開発に寄与していく。
AI-ワーキンググループ
ビッグデータサイエンス ワーキンググループ
リスク評価ワーキンググループ
リキッドバイオプシーワーキンググループ
乳腺ロボット手術ワーキンググループ
乳癌ラジオ波焼灼療法検討ワーキング
乳房再建に関するワーキンググループ(2022年-2024年)
大学教育に関するワーキンググループ