一般社団法人 日本乳癌学会

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学会概要

AI-ワーキンググループ

最終更新日:2025年1月6日

1.設立の背景

 乳がん診療における人工知能(AI)の活用は、画像診断分野をはじめとして近年盛んに研究され、実際に臨床で用いる診断補助AIソフトウェアが商用として販売されるに至っている。他の分野でも例えば病理診断分野ではAIの活用により非常に手間のかかる病理診断や定量化が効率的にできるような工夫が行われている。AIを活用した医療のあり方は医療者及び患者に様々な恩恵をもたらすと考えられるが、他方その扱い方にはまだ注意が必要であり、こうしたAIの開発やアップデートには信頼できるデータベース構築が欠かせない。そうした動きを受けて、日本乳癌学会としては乳がん診療という観点からAIの活用の基盤整備に取り組むべきと考えられた。

2.主旨

 目的は、「乳腺画像診断・病理診断に数理計量学、人工知能(AI)を導入するための基盤整備について検討を行うこと」である。具体的には、乳腺画像・病理について、AIの活用に関して必要と考えられる画像・病理およびそれに関連したデータの共有や多施設共同研究を促進するための環境を整備し、AI活用の成果の円滑な乳がん患者・検診受診者への還元を目指すとともに、世界にエビデンスを発信できる体制を構築する。
 さらに、当WGの活動期間中にChat GPTなどの大規模言語モデル(Large Language Model: LLM)の普及などもあいまって、診断のみに限らず治療やリスク予測に関する情報収集・検索・共有ツールとしてのAIも注目され、当WGでも主たる取り組みの一つとしてとりあげることとなったため、当WG内での議論の結果、以下のように目的を修正した。

 「乳腺画像診断・病理診断に数理計量学、人工知能(AI)を導入するための基盤整備について検討を行うこと。さらに、治療も含めた乳癌診療にかかわる情報の収集・検索・共有・提供を支援促進する基盤を整備すること。

3.メンバー構成

 放射線診断科、病理診断科、乳腺外科の各分野で、AIの専門的知識を有する研究開発者のみならず、ユーザーとしてこれらのAIを用いる人も含めた。アカデミアのみならず、病院・クリニックからの視点もいれ、かつメンバーの年齢層も分散するように考慮した。

共同座長

鈴⽊貴 東北⼤学⼤学院 医学系研究科 病理診断学分野(病理)
⽚岡正⼦ 京都⼤学⼤学院医学研究科 放射線医学講座 画像診断学・核医学(放射線診断)

メンバー

⼭本陽⼀朗 理化学研究所 ⾰新知能統合研究センター 病理情報学チーム チームリーダー(病理)
植⽥琢也 東北⼤学⼤学院医学系研究科画像診断学分野(放射線診断)
藤岡友之 東京医科⻭科⼤学病院 放射線診断科(放射線診断)
井上謙⼀ 湘南記念病院 乳がんセンター(乳腺外科)
菊池真理 東邦大学医療センター大橋病院 放射線科(放射線診断)
⽟城研太朗 那覇⻄クリニック 乳腺外科(乳腺外科)
河口浩介 三重大学医学部附属病院 乳腺外科(乳腺外科)(2023年10月より参加)

4.活動内容

4.1 オンライン講演会・ミーティング

 初年度2023年は、乳がん領域の画像・病理を主体として、AIの研究や臨床での活用の現状を把握し、知識を共有・乳癌学会将来検討委員会AI-WGとして取り組むべき課題を明らかにすることに取り組んだ。具体的には、WGオンラインミーティングの機会を利用して、その時々の活動内容にも即してWGメンバーや学会内外の演者による講演会(ミニレクチャー+Q+QA)を複数回開催した。一部の講演に関しては将来検討委員会にもOpenとし、知識と課題の共有、議論の場の創出を行った。2024年においては後述するWGとしての取り組みが具体化してきたため、講演会をはさみながら、WGとしての事業に関する方向性や方法論について議論を進めてきた。以下にオンライン講演会・ミーティングのリストを提示する。(*はWGメンバー外の招待演者であり所属についても記載)

第1回 2023/2/10 「AIinBreastImaging」(FredrikStrand, KarolinskaInstitute, Sweden)*
第2回 2023/4/25 「マンモグラフィにおけるAIの応用」(井上謙一)
第3回 2023/5/9 「個人情報保護法を含めた医療データの扱いについて」(植田琢也)
第4回 2023/7/18 「TIL評価におけるAI活用事例」(河口浩介)
第5回 2023/7/26 「病理AIからマルチモーダルAIまで:現状と課題」(山本陽一朗)
第6回 2023/8/1 「ガイドライン活用補助ChatGPT」(井上謙一)
第7回 2023/9/19 「乳腺画像診断においてAIに期待すること」(菊池真理)
第8回 2023/11/21 「AIを用いて開発された医療機器の薬事審査について」(加藤健太郎, PMDA)*
第9回 2024/1/11 2024年度予算案
第10回 2024/2/19 2024年度2つの活動計画を決定
第11回 2024/5/16 「日医放AI加算とそれに伴うAI診断補助ソフトウェア管理指針」(待鳥詔洋, 国立国際医療研究センター国府台病院)*
第12回 2024/6/13 「METIS Eye乳腺超音波の診断補助AIソフトウェア」(林田哲, 慶應義塾大学医学部一般・消化器外科)*
第13回 2024/7/4 AIソフトウェア管理指針について
第14回 2024/8/6 WG活動レポート、ChatGPT検索システムの検証研究立案

4.2 著作物

 Rad Fan7月号において「乳癌学会におけるAI(artificial intelligence)の活用に向けた取り組み」を上梓。本邦における画像診断分野、病理分野でのAI活用の現状について概説した1

4.3 学会発表

 2023年、2024年ともに、乳癌学会学術総会においてWG活動報告を行った2,3,4。また、2024年においては、2023年に行われた乳癌学会若手会員のGroup MIRAY-1による提案に対するアンサーセッションが行われた。当WGは、「治療提案におけるAIの開発・利用」の提案に対し、AI検索システムの活用を提案した。AI検索システムとしては、すでに2023年8月に当WGのメンバーである井上謙一が提案したAI検索システムにつき実用化に向けて当WGで検証を進めている状況であるが、その検証中のAI検索システムを応用することで可能と考えられた5 日本乳癌学会以外の学術集会においては、日本外科学会において、座長の片岡が講演の中で本WGの活動についても触れている6。さらに、指針策定に関する話題を、日本医学放射線学会(日医放)秋季大会(福岡)で行われる日本医用画像電子情報・人工知能研究会にて発表を予定している。

4.4 現状分析と活動方針立案

 上に掲げた活動を通じて、まず2023年6月の活動報告書では以下のような分析を行った。
欧米の研究と比較して、日本で大規模な研究が少ない理由

  • もともと大規模な研究・データベースが少ない
  • 北欧/英国等では検診MGデータが地域のBreast Unitや国レベルで集約
  • ヨーロッパではデータの利活用につき、国民の理解・合意形成がある(日本では、受診者のAI受け止めに関してデータが乏しい)

マンモグラフィ(MG)読影支援AIのTrialを通じて明らかとなった問題点

  • MGでコントラスト分解能・空間分解能のメーカー間格差があり標準化が必要
  • AI研究には大規模データが必要だが、データ収集・保存が問題(画像を施設から持ち出さない連合学習やブロックチェーンの活用が必要)

情報の扱いに関しての留意点

  • 改正個人情報保護法の下では、画像・病理を含めた個人情報の利用には様々な規制があり、目的(研究か開発か)、例外規定の適応の有無、研究を行う施設、含まれる情報の内容により異なる。
  • 規制は今後変更ありうるが、データベース作成・管理・活用は慎重な計画が必要。政府の動向も注視(個人情報保護委員会のWebsite、保健医療分野AI開発加速コンソーシアム等)

次年度の計画

  • 勉強会の継続
  • 日本乳癌学会として実現可能なAI研究のためのデータベース作成・データ収集法の試行
  • メンバー間、および委員会での情報共有・情報収集
  • 日本乳癌学会会員を対象とし乳がん診療におけるAI活用についての意識調査
  • 本WG活動についての発信(何らかの提言)
  • モデルケースとしてメンバーを中心に研究課題に取り組む

2024年からは、上記のうち当学会として優先順位の高い課題として具体的に以下の2つの課題を重点的に取り組んでいる。2024年8月時点までの内容につきその成果を報告する。

  • 乳腺画像(MG,USを中心に)AI診断支援ソフトウェア安全管理運用指針の作成 
  • 大規模言語モデルを用いた乳がん診療関連情報検索の具体化と検証活動

5.成果

5.1 画像診断補助AIソフトウェア管理指針

1:診断補助AIソフトウェアをめぐる動き
 日本医学放射線学会(日医放)では2023年4月から管理加算3(常勤放射線科医の多い施設で取得可能:2024年6月からは管理加算3および4の施設に拡大)の施設要件に診断補助人工知能(AI)ソフトウェアの管理が加わった。他学会に先駆けて診断補助AIソフトウェア管理指針が策定され、指針に基づき管理責任者から導入ソフトウェアの院内スタッフ向け使用法説明等の安全管理を行うこととなっている。
 診断補助人工知能(AI)ソフトウェアは乳房画像診断の分野でも盛んに研究され、海外では複数の商用診断補助AIソフトウェアが用いられつつある。日本でも2024年6月時点で乳腺超音波に関するAIソフトウェア2本が薬事法の承認を受けており、今後複数のAIソフトウェアが承認後販売されると思われる。診断補助AIソフトウェアは、乳がん検診及び診療において読影医不足や読影医の過剰負担の解消、見逃し防止等に期待がかかる。

2:乳房画像における特殊性
 日本においてはマンモグラフィ(MG)、超音波(US)といった乳房画像診断は外科医、産婦人科医が読影を行っている施設がある。例えば日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)によるマンモグラフィ読影試験で評価B以上の医師のうち放射線科医は2~3割前後と少ない。読影医の構成を考えると日医放の管理下にない乳がんの診療・検診施設が多数あると考えられる。したがって日本での乳房画像に対して診療補助AIソフトウェアの管理を行うためには、日医放とは異なるシステム・指針が必要と考えられた。

3:乳房画像診断補助AIソフトウェアの臨床使用に関する管理指針(案)
 上記を踏まえ、日本乳癌学会将来検討委員会AI Working Groupでは、「人工知能技術を活用した 乳房画像診断補助ソフトウェアの臨床使用に関する管理指針(案)」を策定した。日医放の指針を範としつつ、上述の乳房画像における特殊性を踏まえ、1)MGに関するソフトウェアの使用者に精中機構の読影試験基準をクリアした読影者を想定、2)報告義務を簡素化、の点が異なる。

指針案の経緯と今後

 指針案の草稿はAI-WG内で作成の後、日本乳癌学会理事会で議論の上、関連学会からの意見も聴取することとなり、現時点で日本乳がん検診精度管理中央委員会、日本乳癌検診学会にて提示、今後日医放、日本超音波医学会、日本乳腺甲状腺超音波医学会においても議論をお願いする予定である。内容については現在協議中であるためここには掲載しないが、最終的な指針が決まり次第学会のWebsite等での公開を予定している。

5.2 大規模言語モデルを用いた乳がん診療関連情報検索システム

 ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、情報を効率的に収集できる有用なツールである。ただし誤った情報が混在する問題(hallucinationと呼ばれる)があり、正確性が求められる医療への応用において課題となっている。一つの解決策として、検索先を信頼できるデータベースに限定することで、信頼できる情報をもとに、LLMが自動で正確な情報を収集してくれるようなシステムが構築できると考えられる。信頼できる情報として、まずはPubMedからの文献検索結果を基に、LLMが要約する形でclinical questionに答えるautoPubMedというウェブサービスを2023/11より立ち上げ、2024/7現在で100名程が利用している。この間、WG内外のユーザーからフィードバックを受けシステムの改善を行った。本検索システムは、従来の検索法と比較して、今まで手作業で検索していた論文検索を、LLMが自動で行ってくれることが最大の利点である。和訳も自動で行われるため、海外の論文に対して日本語で質問するだけで回答が得られ、作業への心理的負担、作業時間も大幅に減少する。また論文を事前情報としてLLMに与えることで、hallucinationを極限まで減少させることに成功している。今後の活動として、そのhallucinationを含め、回答にどれくらい正確性、信頼性があるのかを定量評価する。方法として、クリニカルクエスチョンを複数個作成し、chatGPTを含む複数のLLM及びautoPubMedに答えさせ、それらの回答に対し、正確性、可読性、信頼性を検証する作業を行っている。

(図:大規模言語モデルを用いた信頼できる検索システムの概念図)

大規模言語モデルを用いた信頼できる検索システムの概念図

6.将来展望

6.1 病理学分野におけるAIの活用

 病理学分野におけるAIの応用は多岐にわたる。具体的には、病理診断業務の補助、治療効果の高精度予測、乳がん創薬に向けたライフサイエンス研究などが挙げられる。がん検出に関連するAIソフトウェアはいくつか発表されているが、病理学におけるAI活用ではドメインシフト(学習した病院群データと実際使用する病院のデータの分布のずれにより機械学習の性能低下が生じること)の問題が発生しやすいことが知られており、臨床的に高精度な多施設検証が求められている。また、スライドスキャナーの比較検証や病理標本の標準化など、AI解析のインフラ整備が重要である。さらに、近年、大規模言語モデルを病理画像にも適用する試みも行われているが、ハルシネーション(幻覚)などの問題は未だ解決されておらず、現状のAI技術の限界に対する医師側の理解を深める必要もある。また、乳がん創薬に向けたライフサイエンス研究へのAI応用も進められている。日本におけるAI分野の発信力向上を目指して「AI for Science」(AIを活用した科学研究の革新)が推進されており、創薬分野や新規バイオマーカーの探索においても、病理AI技術の貢献が期待されている。

6.2 画像診断におけるAIの活用

 放射線画像診断の分野は、内視鏡診断等と並んで、AI活用の研究が盛んに行われてきた。胸部単純写真、胸部CTにおける肺結節の検出、脳血管MRIアンギオグラフィを用いての動脈瘤検出等の読影支援AIソフトウェアが実用化され臨床の現場で活用されている。そうした状況をうけて、他に先駆けて日医放では管理加算3(常勤の画像診断医が3名以上かつ救命救急センターを有する病院)の要件として読影支援AIソフトウェアの管理を追加した。先行する他分野での経験は、乳腺画像分野での活用の検討に際しても学ぶところも大きいと考える。乳腺画像分野においては、Computer assisted detection/diagnosis (CAD) が早くからもちいられた歴史があり、AIの導入も早かった。CADは、具体的には病変の位置情報を示すComputer-aided detection (CADe) 、病変の質的診断(悪性の可能性)までも示すComputer-aided diagnosis (CADx) 、読影の必要性の程度を示すComputer-aided triage (CADt) に分類される。読影医とCAD使用のタイミングにより、Second reader 型Concurrent reader型、First reader型に分類される。現在、承認されている読影AIソフトウェアはSecond reader 型が主体であり、診断は専門の医師が責任をもって行うという原則を保っている。今後多くの診断補助AIソフトウェアが乳がん領域にも参入すると思われる現在、使用者に対して何らかの管理や使用に関する指針が必要という意見の高まりがあり、本WGとしても乳がん領域に関しての画像診断補助AIソフトウェアの管理指針を策定した。現在関連諸学会からの意見を収集している。
 前述のように乳がん領域では非放射線科医が多数診断に関与していることや、検診が多い状況から、日医放をベースにしながらも少し異なったアプローチが必要かと思われる。マンモグラフィ-に関しては読影者は5年に1回読影試験を受けて更新をおこなうことになっているが、AIソフトウェアを活用した読影法は従来とは少し異なる面もあると思われ、今後、指針のみならず、講習などの再教育の場でのAIソフトウェアに関連した読影法の教育なども必要になると思われる。

6.3 大規模言語モデルを用いた、信頼できるエビデンス検索システムの構築

 LLMを用いた乳がん診療関連情報検索システムは、乳癌に限らないがhallucinationを克服し、大規模言語モデルの検索の自由さを保ちつつも正確性が求められる医療への応用を可能とした。将来的には、日本乳癌学会会員向けに、診療の中での疑問をすぐに確認できるようなシステムを目指している。さらに同様のシステムを用いて、データベースを乳癌診療ガイドラインに置き換える手法も構築する。すなわち、乳癌診療ガイドラインの内容をLLMに学習させることが可能である。現在の乳癌診療ガイドラインはクリニカルクエスチョンのリストを雑誌ないしウェブサイトから手動で検索・選択することで自らの疑問点を解消する構造となっている。そこでLLMにガイドラインの内容を与えた上で日本語で質問すれば、適切なレビューを自動で選択し回答してくれるため、リストを一つ一つ確認する手間が省け、時間的コストが大幅に減少する。
これをウェブサービスとして日本乳癌学会会員に対し利用可能とすれば、会員の乳がん診療ガイドラインの利用率が向上し、結果として日本全国規模で乳がん診療の向上に繋がることが期待される。現在、ガイドラインのデータ利用を踏まえたウェブサービス基盤を構築中であり、ベータ版の修正・改良を重ねつつ年度内にサービスを開始することを目標とする。

6.4 日本乳癌学会はAIの活用に何を求めるか?

 上述のように、この1年半余りの活動を振り返ると、当初は画像診断・病理を中心に基盤整備を考えていた。その方向性は指針策定につながっていったが、AIにおけるLLMの導入が急速に進み、それに伴いAIの応用範囲も当初想定しなかった様々な可能性が生じてきており、LLMをベースにした検索システムなどより臨床・診療に直結したAIの活用法、さらには患者や検診受診者への情報提供も見据えた活動にも取り組んできた。今後、まず日本乳癌学会の活動に密接に関連したAIの活用としては、新規の取り組みも含め以下のようなものが候補と考えられる。

  • 乳腺画像診断分野の診断補助AIソフトウェア活用指針の確立
  • LLMを用いた検索システム(検索範囲:Pubmedまたは乳癌診療ガイドライン)
  • 大規模データべースからの的確かつ効率的な情報の抽出
  • 編集委員会と合同で、査読プロセス等におけるAIの活用
  • ガイドライン作成におけるエビデンス収集でのAIの活用

 種々ある課題のうち、どれを優先して学会として全国規模で取り組むべきかの議論は重要である。日本乳癌学会会員の施設ではAIを利用したソフトウェアの活用や、バーチャルスライドなどのデジタルデータの整備がどの程度進んでいるのか、また創薬の分野におけるAI技術の導入への希望や、NCDデータなどのデータベースを基にした情報の提供などについて、会員向けのアンケート調査を行い、まずは需要のより確実な把握を目指したい。大学などの研究施設と市中病院、診療所、検診センターなどそれぞれの立場でAIに期待するものには差異があると考えられ、それぞれの立場に応じたAI活用への取り組みが必要であろう。
 なお、当WGは、令和7年秋からはAI委員会として活動を継続・発展させる機会を得た。AIの活用はまだ始まったばかりであるが、すでに診療のあり方を変えつつあり乳がん診療もその例外ではない。現時点ではAI活用に際して必要な知識の教育や、医療者・患者・一般市民がAI活用の恩恵を享受できるような基盤整備・制度設計はAI委員会の重要なミッションであり、将来を見据えてAIによる大規模な活用を想定しての医療・疫学・検診ビックデータ収集のありかた、個人情報の扱いに関する議論も必要であろう。ただし、AI分野の発展の速さとそれに伴う価値観の変化を考えるとAI委員会のミッションは既成概念にとらわれず絶えず柔軟に見直していくことも必要と考えられる。

7.AI-WGの活動に関連した著作物・学会発表

7.1 著作物

  1. 乳癌学会におけるAI (artificial intelligence) の活用に向けた取り組み~画像と病理を中心に
    片岡正子, 井上謙一, 藤岡友之, 菊池真理, 山本陽一朗, 玉城研太朗, 鈴木 貴, 戸井雅和
    Rad Fan 21(7) 2023年7月

7.2 学会発表

  1. 乳癌画像診断におけるAI(artificial intelligence)の動向と展望
    片岡正子, 井上謙一, 植田琢也, 藤岡友之, 菊池真理, 山本陽一朗, 玉城研太朗, 鈴木貴
    第31回日本乳癌学会学術総会 2023年6月29日
  2. 病理におけるAI(artificial intelligence)の動向と展望
    鈴木 貴, 山本 陽一朗, 植田 琢也, 玉城 研太朗, 藤岡 友之, 井上 謙一, 菊池 真理, 片岡 正子
    第31回日本乳癌学会学術総会 2023年6月29日
  3. 将来検討委員会企画:AI-WGによる乳癌に関わるAIの活用のための基盤づくり
    鈴木貴, 井上謙一, 山本陽一朗, 植田琢也, 玉城研太朗, 藤岡友之, 菊池真理, 河口浩介, 片岡正子
    第32回日本乳癌学会学術総会 2024年7月12日
  4. 次世代の乳がん医療を拓く(アンサー企画【各担当委員会からの回答】)2. 若年乳がん患者のケアを向上させるAIによる治療提案
    片岡正子, 井上謙一, 植田琢也, 藤岡友之, 菊池真理, 山本陽一朗, 玉城研太朗, 河口浩介, 鈴木貴
    第32回日本乳癌学会学術総会 2024年7月12日
  5. シンポジウム; 乳腺診療における技術革新「AIと遠隔画像診断」
    片岡正子
    第124回日本外科学会定期学術集会 2024年4月18日

 


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